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時は昭和13年6月、満州国首都・新京(現長春)にある建国大学………。
そこに二人の男がやってきた。一人は関東軍参謀にして建国大学創設主任の辻政信少佐、そしてもう一人はウムボルトという少年だった。辻少佐は建国大の作田副総長にねじ込み、ウムボルトを特別研修生として建国大へと入学させたのであった。ちなみにウムボルトは日本人の父と蒙古人の母との間に生まれた日蒙二世であり、民族運動に参加して官憲に逮捕されるという前科を持っていた。
こうして、いささか奇妙な経緯でウムボルトの大学生活が始まった。ちなみに建国大学は、日本の傀儡国家であった満州国の国策大学であったが、実質的な理念は、満州事変の立役者石原莞爾が唱えた五族共和の実現に立脚していて、広く諸民族の学生を受け入れ、学風はむしろ自由闊達であったと言われている。そんな大学生活の中でウムボルトは様々な人々と出会う、石原莞爾、植芝盛平、そして甘粕正彦など……。その出会いの中で、ウムボルトは両親が死んだ理由、父・深見圭介が極秘に就いていた任務、そして日本をはじめとする国家間の謀略戦の謎へとぶつかっていくのであった………。
この虹色のトロッキーは、1990年11月から1996年11月までコミックトムに連載されていた作品です。連載当時はちょうど昭和が終わり平成の時代がはじまった頃で、前時代としての昭和という時代についての検証が細々と始まった頃であったと記憶しています。それと冷戦の終結ですね。それまでほぼ半世紀に亘って人類社会を支配していた思想の二大潮流である、資本主義と共産主義という思想が国家の基本となる時代が終わり、かわって固有の民族や文化、そして宗教などといったものが国家の基本となる時代が再びやってきた時期でもありました。そんな時代の中で出てきたこの作品は、これまであまり触れられることが無かった戦前の昭和、しかも満州国を舞台にした珍しい作品であり、やはりそんな時代だからこそ出てきた作品でもありました。
しかもこの作品には今まで歴史の授業では学ばない事柄が多く出てきます。……建国大学、協和会、抗日聯軍、ユダヤ人難民、そして興安軍。これらの事柄は、いわゆる一般のイメージとしての日中間の満州国というものだけでなく、周辺諸国も含めた国家間の外交戦略の中での満州国というものを浮き彫りにしていると思います。
この作品は確かにフィクションです。ですがテーマについては歴史の本質の一つを突いていると私は思います。テーマについてはあえて申しません。ただこの作品を読むことで、授業ではほとんど習うことが無い近代史について少しでも興味が抱ければ、それは良いことであろうと私は思います。
虹色のトロッキー1 ISBN4-267-90235-6
虹色のトロッキー2 ISBN4-267-90240-2
虹色のトロッキー3 ISBN4-267-90255-0
虹色のトロッキー4 ISBN4-267-90265-8
虹色のトロッキー5 ISBN4-267-90284-4
虹色のトロッキー6 ISBN4-267-90292-5
虹色のトロッキー7 ISBN4-267-90295-X
虹色のトロッキー8 ISBN4-267-90299-2